蜂群崩壊症候群(CCD)について


 蜂群崩壊症候群(
CCD)について 

                                  2011515                            

 蜂群崩壊症候群(CCD)に関して、農業関係の専門機関と言われるところ、あるいは学者と呼ばれる人たちが、声をそろえて「原因不明である」とか「複合的原因である」とか言っている。ニホンミツバチを20年以上飼ってきた者の直感で、私は最初から農薬が原因だと思った。様々の説が論じられていたが、すべてニホンニツバチとは縁遠い話しばかりであった。何としても農薬が原因だとは認めさせない意図が感じられた。

それらの論理に共通するのは、ミツバチだけが消滅したという前提に立っていることで、その他の昆虫がどうなっているのか完全に無視されている。子供だましのような論理の立て方である。

農薬と通常呼んでいるが殺虫剤である。虫を殺すために開発したのだから、ミツバチに影響を与えるのは当然であって、それを、ミツバチだけが別の原因で死ぬ論理をいろいろ探している。机上の空論もいいとこで、まじめに反論する気にはなれない。ところがそんな論が現在大勢を占めていて、農薬が今後も使われる形勢なので、あえて現場の状況を報告し、反論させていただきたいと思う。

 ニホンミツバチの場合、野生種なので、基本的には人の世話を必要としない。ライフサイクルは、春の分蜂によって一般的には概略3倍に増殖し、秋までに女王蜂の自然死で3分の1の群が消滅し、3分の1がオオスズメバチの襲撃で死に、残りの3分の1が翌春に分蜂するということを繰り返している。私には、このハチが何かの病気かダニで死んだ記憶は全くない。ただ、長雨で花蜜が得られず餓死することはある。そんなときは、邪道とは思うが、給餌をすれば助かる。

セイヨウミツバチの場合は違っていて、人の管理下にあるが、女王蜂の自然死で3分の1が消滅するのは同じであるが、残りの3分の1はダニで死ぬのである。そして、ニホンミツバチと同じように3分の1になり、そこから再び100%に戻る。

しかし、それは、人がオオスズメバチから護ってやることを前提にしている。もし、人が護ってやらないと、オオスズメバチに全滅させられる。オオスズメバチ対策を考えないと養蜂は成り立たない。

寒さにも弱く、湿気の多いアジアではいろいろの病気にも罹りやすく、人が世話を怠ると群数を減らす。いわゆる複合的要因で死滅するのである。だから、農薬も含めた複合的要因で死滅したと言われると反論が難しい。そのようなセイヨウミツバチの弱みを突いて、農薬単独説は押しつぶされている。

 ところが、ニホンミツバチには複合的要因説は通用しない。2009年から2010年まで2年を経過して群が1%も生き残っていないのは、人為的な原因がある訳で、それは農薬以外に考えられない。しかも新しいタイプの農薬である。

農薬は以前から散布されてきていた。しかしこんな被害を与えることはなかった。私のニホンミツバチの群など、2009年の分蜂の後、110群いたのが秋には35群になり、翌春の分蜂によって、たった2倍の70群になり、それが秋までには3群に減った。私はそれらの群の死にざまを見てきた。

 稲や茶に農薬を散布すると、散布地までの距離が近いと、すぐ死に始めるが、遠いと死骸を残さないまま、蜂数が12週間で、ミツを残したまま消滅していた。どこかに逃去したのではない。ミツバチは個々に逃去することはない。必ず集団で逃去する。少しずつハチ数が減るのは、巣を出たきり帰って来ないからである。神経系農薬なら方向感覚を狂わせられることが十分考えられる。

 また、こんな死に方も見ている。帰って来たハチが次々に死ぬのであるが、中には自分の巣箱に入らないで隣の巣箱に行くらしく、たくさんのハチが噛みつきあって死ぬのである。自分の巣の匂いを忘れて隣に行ったとしか考えられない。新しい分蜂群ならそんなこともあるが、秋にそんなことがあったことはない。匂いを感ずる神経に異常が起こったと考えると理解できる。

長い進化の歴史の中で鍛えられてきたこのハチが、人為的な原因以外の原因で死ぬとは考えられない。

 アカリンダニとかサックブルード病とか唱える人もいる。農薬で弱るといろいろと病気やダニにも罹りやすくなるはずである。

白い幼虫を巣の外に捨てるのは昔からある現象で、病気ではない。どこかで農薬を撒いた、と考えるのが常識である。ミカンの花の咲くころによく起こったもので、働き蜂が持ち込んだ毒入り花粉を食べたためと思われた。数か所の発生源は分かっていて、毎年歯がゆい思いをしていたものである。

昔の農薬の効果は一時的なものだったので、3日もすれば子捨ては終わり、群は正常に戻っていた。しかしこの1,2年の幼虫引き出しは巣房が空になるまで続き、その後すべてのハチがいなくなる。しかも発生源は特定できない。3カ月以上の残留効果があるのだから、どこまでも飛散する。

地球温暖化とか、天候不順とか言って反論する人もいる。そんな人は長崎県に来て、島巡りをしてみたらよい。本土側ではあらゆる昆虫がほとんど死滅しているのに、ニホンミツバチ養蜂家のいる島では、他の昆虫も健在だし、ツバメもスズメも飛び回っている。海岸にはフナムシも貝類もいる。川には蛙もアメンボウもミズスマシもいる。養蜂家たちが、最近の高性能の農薬を島に入れないように農協と役場に申し入れを行っていたのである。もちろんこれらの島でも昔に比べたら、昆虫や貝類は減っているそうである。この10数年の汚染の結果は否めようがない。

「島は周りが海なので温暖化の影響を受け難いのではないか」と言った人がいる。そんな人には次の事実を知ってもらいたい。養蜂家がおらず、農薬を野放図に撒いた島からは、昆虫、貝、ツバメ、スズメが姿を消し、太古から生息していたニホンミツバチを絶滅させた。(3年前にこれらの島で撮ったニホンミツバチの写真を持っている)。むしろ本土側より汚染はひどい。過疎化しており、文句を言う人がいないので、好きなように散布できる。

そもそも、神経系農薬を開発した理由は、老齢化した農村の労働力を補うために3カ月以上の残留効果のあるものを目指したところにある。残留効果3カ月以上ということは、その間、この農薬は拡散し続けるということである。風下ならどこまでも飛んでゆく。どんな昆虫も生き残れるはずはない。日本の国土で逃れられるところはないはずである。ミツバチだけが殺虫剤では死なず、ウイルスやストレスで死ぬはずはない。

 私たちが、ミツバチを殺すなと言うと、必要悪だ、米の増産とハチ蜜とどちらが大事か、と反論した人がいた。この農薬を使う第一の理由は、カメムシ駆除である。カメムシは虫くい米、斑点米を生む。1000粒に23粒の斑点米が混じると等級が2等米になり値段が下がる。味や増産とは関係ない。しかもその斑点米は、レザー光線を使った機械で選別できると言われる。

また、私たちはハチミツがほしくて、ネオニコチノイド系農薬に反対しているのではない。農業を根幹で支えている花粉媒介者を殺すなと言っているのである。

高性能の殺虫剤を開発し、薬効は2カ月以上ありますなどと、その効果を広告で宣伝しておきながら、私たちが、ミツバチが死んだというと、死骸を集めて分析し、因果関係を証明しろと言う。「人をバカにしているのか」と怒りを覚える。

 そもそも、自分の田畑の害虫を殺すために、即ち自分の利益のために、周り数キロの昆虫を無差別に殺し、他人のミツバチを殺し、環境を破壊するのは犯罪ではないのか。

夏に夜の高速道路を走ってみたらよい。虫が1匹でもフロントグラスに付着するか? 農村の自動販売機の灯りに何匹の虫が来ているか? 藪の中に半袖半ズボンで入って蚊に食われるか? ネズミの死骸にハエがたからず、ウジも沸かないので、悪臭のする死骸がいつまでも残っている。

こんなことを言ったら、「蚊はいるよ」と教えてくれた友人がいた。調べてみたら確かに居た。しかし、昔の蚊ではなかった。昔は蚊と言ったら、白黒の縞模様の奴であった。大小2種類がいた。それが今はいない。今いるのは、薄い茶色の身体の柔らかい奴である。昔はいなかったはずである。少数であるが、なぜこんな蚊だけになったのか分からない。

また、「自動車のフロントグラスや自販機のガラスは紫外線カットされているので虫は着かない」という反論がインターネットで東京から来た。

フロントグラスは運転者が日焼けしないように紫外線カットがなされている訳で、夜に走る自動車とは何の関係もない。自販機が、虫を引き付ける紫外線をカットしているというのは、販売競争の激しい東京の自販機の話である。長崎県の離島の自販機には、わんさと虫が着いている。

東京に行ったとき、夜の自販機のガラスに触ってみたら熱かった。佐世保の自販機は冷たい。東京の自販機は紫外線を吸収する方法で紫外線をカットしているようである。吸収された紫外線が熱に変換していると思われる。

2010年の秋にはブルベリー農家から、花は咲いたがミツバチが来ず、例年の1割しか実を結ばなかったと聞いた。梅もサクランボウもほとんど結果しなかったと聞いた。昆虫がいなくなったので、農村からツバメも消えた。農薬で汚染されたコメを食べてスズメも消えた。ハトも消えた。そのコメは人の主食である。やがて人の番が回ってくるはずである。

私がこんなことを言うと「ヒステリックである」「ツバメは目撃されている」などと言う大学関係者がいる。ツバメは街中にはいる。街中にしかいない。こんな状況になっているのは長崎県だけではないはずである。

東京の学者さんには書斎派が多いようである。東京を出て、自分の脚で現場を確かめていただきたい。

電車で東京を出てみるのもよい。JRのどこかのプラットホームにハトが1匹でもいるか。つい最近までハトは人々の足にまとわりついていたのである。ハトは近くの田んぼに降りて落ち穂を摘まんで死んだに違いないのである。プラットホームにハトがいるのは東京など大都市の駅だけである。こんな重大な異変が起きているのに、なぜ問題にならないのか。

佐世保から博多まで電車で行き、車窓から佐賀平野を眺めると、カチガラスが消えていることに気づく。農薬で水田から水生昆虫がいなくなり、餌を失ったカチガラスが死滅したと思われる。あるいは水田の水を飲んで中毒死したのかもしれない。

佐賀平野からはスズメもいなくなっているが、博多の街に近づくとスズメの姿が目につくようになる。農薬を市街地近くに散布するのはさすがにためらわれているようである。

この農薬と鳥類の死滅との因果関係を証明するために、汚染された米をヒヨコに食べさせる実験をしてみようと思い、県の関係者に相談してみたところ、素人でおこなっても、信ぴょう性がないということで結果が出ても取り上げてもらえないと言われた。では権威あるところでやってくださいと言うと、計画決定に1年、予算獲得に1年、実験に2年、結果発表に1年、合計5年かかると言われた。それでは、その間に生き物は絶滅してしまう。

水生昆虫は全国の水田からいなくなっているのではないだろうか。そのことで特に問題にしなければならないことは、水源池のほとんどの上流が水田になっていることである。水源池に流れ込む河川に水生昆虫が見当たらない。蛙やイモリは当然として、アメンボウやミズスマシもいない。私たちは殺虫剤入りの水道水を毎日飲んでいることになる。

私はこのことを水道局に質問したことがある。日本の浄水能力は優れている旨の説明があったので、農薬も濾し取れるのか質問したのである。答えは、それはできないが、定期検査で基準値を超えたことはない、ということであった。農薬散布の激しい時に検査するのかと糺すと、そんなことは考慮していない、しかし金魚を飼っているので危険な濃度になったら判る、と言う返事であった。金魚が死んでからでは手遅れではないのか、という追及には答えは返って来なかった。

2009年に虫を殺し過ぎたため、2010年はこの農薬が売れなかった。農協の職員は農薬の訪問販売をして回った。「在庫が増えて困っています。今なら安くで買えます」と言いながら頑張ったが、売れ行きは良くなかったと聞いている。自分の首を絞めたのである。長い目でみたらこの農薬は儲からない。

最近、農村で農薬の危険性が気づかれ始めてきた。ほとんどの農家で自家消費用は米も野菜も田畑は別である。自家消費用畑では農薬の代わりに、忌避剤として木酢と竹酢を使う農家が少しずつ増えてきている。どうして全面的に有機栽培に切り替えられないのか尋ねてみると、「これまで農協主導の農業しかしてきていないので、自信が持てない」という返事である。指導してくれるところがないのである。それに、農協に逆らえないということもある。金を借りている、農機具や肥料の代金が未払いである、など首根っこを押さえられている。農薬を買わないと嫌味を言われる。作物を出荷させてもらえない。有機農業がやれない仕組みが出来上がっている。

この農薬を根から吸い上げさせる方法で使い続けると地中生物も殺し、土地を劣化させることが分かっているので、キャベツ栽培で別の方法を編み出した人がいる。新芽が成長し、葉が巻き始めたとき、この農薬を芯のところに筆で微量付けるのである。これでキャベツは収穫するまで農薬散布を必要とせず、全く虫に食われた跡もヒヨドリに突かれた跡もない美しいキャベツが出来上がる。消費者には喜んでもらえるので、良い値段で出荷できるが、絶対に自家用には消費しない。

自家用には消費しない物を黙って販売するのは間違いである。

最近のトウモロコシは甘い。茎も甘いのか虫に弱い。根が食われ、少しの風で倒れる。それで土にこの農薬を散布して根から吸い上げさせ、茎が食われないようにする。農薬は花粉にも回り、ミツバチが死ぬ。もちろん実にも含まれ、それを人が食べる。人は体重が大きいので即死はしない。農薬は体中に蓄積して、いつかガンを発症する。

米も同じである。モミを撒く前に「種子処理」と言って、この農薬に一定時間浸して浸透させる。稲は植えてから刈り取るまで虫に食われない。根から吸い上げた水分を葉から蒸発させるが、朝は露となって葉に留まる。それをミツバチやスズメが飲んで中毒死する。フランスの学者が研究して判明したことである。稲は植えてから刈り取るまで農薬を葉から発散し続ける。残留効果3カ月以上と言われるそのシステムである。農村地帯では、人は薄い毒ガスの中で生活していると言える。

5月から10月まで半年間は農村地帯はこの農薬で満ちていると思ってよい。匂いはしないが、頭痛はする。目と喉が痛くなる人もいる。私はこの2年間、半年間は、喉の痛みが取れなかった。病院に行ったが原因は分からなかった。しかし、ミツバチの見回りに田園地帯を巡る度に痛みがひどくなるので農薬が原因だと確信するに至ったのである。

この農薬は浸透性も強い。以前は、買ってきた野菜は1時間水に漬けたらよいと言われていた。しかし今はそれでは駄目である。果肉の内部に浸透している。

私は最近、果物や野菜を口に持って行くとき恐怖を感ずるようになった。安心して食べられるものがほとんどなくなった。友人の一人は、イチゴやトマトなどは最初少しかじって、舌で触ると農薬に汚染されている場合、判るようになったと言っている。わずかにピリッとするそうである。

ペットの蚤取りのための首輪が市販されている。それの仕組は、首輪に仕掛けられた薬品がペットの皮膚を通して体内に浸透し、血管に入り、そのペットの血を吸った蚤が死ぬのである。友人の話だと、首輪でなく、ただ塗ってやるだけの薬もあるそうであるが、それを飼い犬に塗ってやったら、犬は4,5日、とても弱ったそうである。この方法を開発した人は、先ず自分の首に塗って試してみるべきではなかったのか。

私の講演の後で、聴衆の一人が話してくれたことがある。「近くの人が、『後で水を被ればよい』と言って、いつも裸で、マスクもしないで農薬散布をしていたが、昨年、肝臓肥大で亡くなった。」

この農薬は上述のペットの場合と同じで、蚤の脳を直撃できるほどきめが細かく、貫通力がある。散布する農薬は全身の皮膚から身体内部に浸透するのは当然である。口からも大量に肺に吸い込んでいた訳で、内部被曝もひどかったと思われる。その毒を処理するのに肝臓がパンクしたに違いなかった。どのみち、どんなマスクも役に立たないと思う。空気が通れるところは自由に通り抜ける。粒子が小さい分、密度は濃くなる。何キロ離れてもウンカやブヨの微小な脳を貫通する。人間のDNAも貫通し破壊するはずである。放射線とよく似ている。

衣服を付けていても危ない。危険に最も曝されるのは、これを散布する人たちである。イチゴやアスパラガスのハウスの中で農薬散布をしたらどうなるか? 近所でも死者は出ているが、農薬との因果関係は、医者も言わない。

こんな話も聞いた。「稲田の農薬散布には年に3,4回リモコンヘリがやってくるが、その度に操縦者が違っている。前の人はどうしているのかと尋ねると、いつも『体調不良だ』と返事が返ってくる。この仕事についたら半年くらいしか身体はもたないようだ」

この農薬は人体には無害だと宣伝しているので、安全対策と安全教育はおろそかにならざるを得ない。死んでも補償はない。補償などしたら、農薬会社は農薬が危険であることを認めることになり、損害賠償どころか、農薬が売れなくなるからである。

また別の人の話もある。ブルベリーが実を着けないので、近くの稲田に無人ヘリで農薬を散布してからミツバチが来なくなったので、それが原因に違いないと思い、農協に行って、散布した農薬の名前を尋ねたそうである。農協の職員は住所氏名を聞いた揚句、企業秘密なので農薬の種類は教えられないと言ったそうである。そもそも農協は誰の味方なのか? 農協の存在理由は何なのか? 最近、農協の評判が良くない。

2011年の分蜂に向けて、平戸島から佐世保市までの70キロにわたって自然界で分蜂したのを捕えるために55ヶ所に待ち箱を設置した。そのうち40ヶ所の蜂場にはすでに空になった巣箱が並んでいるが、新しく誘引剤を入れて回った。やがてどれほどのニホンミツバチがこの地域の自然界に生き残っているか分かる。あまり期待はできそうにない。長崎県北部を6時間走り回り、桜と菜の花が目につき次第、ミツバチの姿を探したが1か所でしか見つからなかった。

佐世保市内に住むハチ仲間の一人は、昨年すべての群を失ったので、今年は何とか1群でも捉えなければならないと思い、佐世保周辺をバイクで1日がかりで廻った。なかなか見つからなかったが、最後に行った佐世保湾の右側の半島である野崎半島でやっと見付けることができたそうである。一縷の望みを持ってそこに待ち箱を持って行きます、と私に報告があった。3年前までは桜と菜の花には、あまねくミツバチが来ていたものである。ここまで減ってしまったものが回復するには、今すぐ農薬をやめても、5年や10年はかかるであろう。ともかく、この農薬は即刻禁止すべきである。

ところで、51日現在、一応分蜂期も終わったので、この12年で死滅した40ヶ所の蜂場にはハチが戻って来ているかどうか見回ったが、1群入っているだけであった。110群いたところに唯の1群である。やはりほとんどの地域で、自然生息のハチたちも徹底的に殺されているようである。身の毛がよだつような恐怖を覚える。そんなところをめがけて分蜂群が飛び去っているが、また殺されてしまう。運よく今年は農薬が散布されないかもしれないが、交配相手が少ないだろうから、繁殖がうまくいかないであろう。もし、はっきり今年は農薬散布はないと判っていれば、そんな所に複数の分蜂群を持ち込めるのだが。

新しく開拓した15ヶ所のうち2か所では待ち箱に入っていた。しかもその2か所では、それぞれ3回入り、合計6群を捕えることができた。農薬の影響がなさそうなところを選んで待ち箱を置いたのであったが、稀にではあるが、そんな所があることが分かってわずかの希望を持っている。

全体的にみると、環境からハチ数が少なくなると、残ったハチたちは数と生育域を元に戻そうとする。今年もこの農薬が散布されれば、本当に棲息域はなくなる恐れがある。

このハチは水や空気や森や大地と同じ自然の一部である。花が咲いて実のなる植物の存在を支えている。人間の存在に欠かすことができない。国は保護昆虫に指定すべきだと思っている。

先日、私の家から1時間走ったら到着できる生月島に、松くい虫駆除剤空撒に関わる調査に行ってきたが、そのついでに地元の人たちの話を聞く機会があった。そして、同じ島の中で、漁民と農民の間に亀裂が広がりつつあることに気づいた。農家が農薬を散布することで海を荒廃させ、そのことが漁業不振の原因の1つになっているのに、農民は農薬を減らそうとしない。そのことで漁民のなかに怒りが蓄積している。

昼食のため入った漁村にある食堂の主人が声を荒げて言った。

「松くい虫駆除剤の散布はもうない。海を荒らすからやめさせた。田にも撒いているが、それもやめろとは言えない。不必要なことからやめてもらうことにした。景観のためだと言っていたが、誰が松など眺めるんだ。風防のためとも言っていた。そんなの他の木で間に合う。魚が欲しけりゃ陸に木の種を撒けと言う。木の種の代わりに農薬を撒いたらどうなる?」

漁民は農薬散布を快く思っていないことを、畔を築いて田植えの準備をしていた農民の1人にぶっつけてみた。

「解っている。俺たちが悪いのかもしれない。俺たちが楽をしたいがために漁民の生活を脅かしていると言われればそうである。でも夏の日照りの中での田の草取りは辛い。元気な若い者もいない。悪いとは解っていても除草剤を撒く。1等米にしたいので殺虫剤を撒く。高く売りたいのは人情だ。この田にも蛙はいなくなった。昔はいまどき蛙がギャーギャー鳴いていたもんだ。ツバメも見かけなくなった。珍しく、2,3日前にツバメを見た。4匹飛んでいた。ところがその後全く見かけない。虫がいないのでどこかに行ったに違いない。人間にも農薬は危険だと解っているが、やめられない。農協の言う通りのこと以外にやり方を知らない。俺たちは漁民に顔向けできないんだ。困ったもんだ。世の中がそうなってしまっている」

 実はこの45年間、この生月島には足を運んでいる。長崎県のほとんどの離島では戦後、ニホンミツバチが絶滅したが、(例外は対馬と小値賀島)。本土寄りの島ではどこも絶滅しなかった。それが最近、絶滅が心配され出したのである。生月もその1つである。それが気になって時々調べに行っているのである。3年前までは全島にいた。一昨年突然、中心部から消えた。田畑が集中している場所である。昨年はそんな場所がほとんど全島に広がった。今年3月下旬には、生月大橋を渡って左に行った菜の花畑でしか見付けることができなかった。だからまだ絶滅には至っていない。数万年もの間、戦後の混乱期も乗り切って生き延びてきたニホンミツバチが、この23年で絶滅しようとしているのである。

このハチが絶滅しやすい昆虫であることは既に離島で証明されている。戦後、疎開や引揚げ者たちの食糧確保のために島が丸坊主になるほどの耕地開拓を行い、蜜源を消滅させたのが主な原因であった。

 これらの離島(壱岐、宇久、中通島、福江島)では、この数年でニホンミツバチの生息を復活させ、生業養蜂が行えるほどに繁殖している。これらの島では、その飼養者たちの反対によってネオニコチノイド系農薬の大規模な使用は行われていない。そのためミツバチだけでなく、すべての昆虫と鳥類が健在である。

ところが今、別の島で再び絶滅が起ころうとしている。今度は農薬によってである。生月以外では、小値賀、松島がそうである。小値賀では20103月に笛吹の狭い範囲で少数見かけた。今年2011年はまだ調査に行けずにいる。すでに絶滅しているかもしれない。西彼の松島も同じ状況である。的山大島では一昨年2009年に絶滅した。島中をどんなに菜の花や雑木の花の中を探しても見つからなかった。

 これらの島では花が咲いて実のなる野菜や果物は、今後永久に収穫できなくなるであろう。農薬は増産どころか、農業を破壊しているのである。

 農業だけではない。農薬は結局海に流れ込む。そして貝類を殺し、稚魚を殺す。

除草剤も問題である。植物プランクトンはもちろん、植物である海藻も枯らすはずである。現在の漁業不振の最大の原因は上述したように、農薬ではないかと漁民の間で言われ始めている。

このままこの農薬が使用され続けるなら、すべての昆虫が消滅し、あるとき突然、野菜と果物が八百屋から消え、永久に戻ることがない事態が起こるような気がしてならない。それは今年の秋かもしれないと思っている。

農薬問題は原発問題と似ているように思えてならない。安全だ、安全だと言い張っているうちに、あるとき突然惨事が起こり、どうあがいても元に戻せない事態が来るのではないかと恐れている。原発問題よりさらに事態は深刻なのではなかろうか? 全国の隅々まで抱えている問題である。

 

 解決策はあるのだろうか? あるはずである。農薬問題は人為的なものである。地震や津波とは違う。人為的に解決できる。今すぐ農薬全廃はできないであろうが、それに向かって進まなければ人類に未来はない。

 まず、現在ある法律を厳格に適用するようにすればよい。農作物を販売する時には、使った農薬の種類と量を表示することが求められているが、これを罰則付きで徹底することである。次に全廃に向かって代替策を早く確立しなければならない。全国的にはすでに有機農業を実践している人たちも結構いる。その蓄積された技術を全国的なものにする体制作りも必要になる。

      
 写真説明:

(左): 的山(あづち)大島の的山港。この島で2009年にニホンニミツバチが絶滅した。その前     年、この島で存在が確認され、写真に撮られた最後の1匹である。

(右): 翌2010年には、この島から昆虫も鳥も貝もいなくなった。牛の流産も起こっている。風車の低周波が原     因だと思っている人もいる。

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