ミツバチの話・寄稿文

久志先生のミツバチのお話などを掲載していきます。

オオスズメバチも人を覚える            2011,10,27

                        久志冨士男

 前回、ニホンミツバチは人を覚えると言うことに着いて書いた。それは、人に蜜を提供する代償としてオオスズメバチから護ってもらうためであろうとも述べた。その証拠に、オオスズメバチに襲われると飼い主のところに「助けてください」と訴えに来るとも述べた。

 このことをオオスズメバチの立場から考えると、興味深いことが判って来る。オオスズメバチとしては人を敵に回したら勝ち目はない。何とか対策を考えなければならない。その結果生み出された知恵は、人に甘えて可愛がってもらう方法である。

 写真を見ていただきたい。これは私が庭でバナナを食べていると、このように私の手に停まってバナナを一緒に食べているところである。この蜂はとても臆病で、馴れていない人には決してこんな風に停まったりはしない。

人の家で飼っている蜜蜂にやって来たら、追っ払ったりしないで、馴らすことである。馴らすのは最初の出会いが大事で、ゆっくり近づいたり、立ち止まったり、離れたりを繰り返す。近づくと緊張して、剣を向けたりするが、そんなときは立ち止まり、次に後退する。

後退することで攻撃の意図がないことを伝えるのである。納得も速い。一旦敵でないと思いこむと、指で触っても気にしなくなる。最初の出会いで失敗したら、命に関わるので、気を抜いてはならない。馴れてしまうとこの写真のように食べ物をおねだりにやって来たりするようになる。

 このハチとの間には、長い進化の歴史の中で、共存して行ける関係が出来上がっているのである。それを人間の側が理解せず、このハチを退治するのが英雄行為だと言わんばかりのテレビ放映が行われる。

 生徒たちがハチに襲われたという報道が時々あるが、学校でハチについての教育がされていないから起こることである。

どんなハチも決して人を先制攻撃することはない。最も毒の強いオオスズメバチは、刺すまでに通常3回くらいの警告行動を行なう。たとえば、人が巣に近づくと数匹が身体の回りを飛び回って、「あなたは敵ではないですか」と問う。このとき立ち止まるのが、「敵ではないですよ」という言葉になる。1分も立ち止まる必要はない。納得して巣に戻るので、後をついて行って、巣の傍に立ってもよい。番兵の蜂が居るのでよく見る。せわしく入口の回りを動き回ったり、羽を小刻みに震わせていたら、一旦ゆっくり45メートル離れ、数秒まって、再び近づく。今度は態度が変わっていて、落ち着いているはずである。

 最初制止されたとき立ち止まらないと、鼻先に寸止め突撃をされる。即ち、刺す真似をして威嚇するのである。それでも立ち止まらないと、目の前でホバリングしながら「カチカチ」とどこからか音を出して威嚇する。それでも立ち止まらず、蜂を手で払ったりすると、巣から大勢の援軍が来て刺すのである。

 こんなことを学校で教える必要がある。人と蜂は仲よく一緒に生きていけるように生まれついているのに、人の側が約束を破って、ハチにとっては大事な巣を取るので、蜂は正当防衛をしているのである。最近の人間は本当に愚かである。






ミツバチの国際交流

                               久志冨士男

 私は佐世保に住んでいます。サーバスの会員でもあるのですが、これは海外の会員をお互い泊め合う組織です。ハンガリー人の女性がホームステイしたとき、私のニホンミツバチを見せました。

 私が気づいたことですが、ニホンミツバチは、人を覚えると刺さなくなります。巣箱の入口に手を置いていると、ガードマンのハチが1分位で手に乗ってくるようになり、それを境に、巣箱の中に手を入れても刺さなくなります。蜜を採るときは、邪魔にならない所に移動してくれます。

 彼女もハチと友だちになってもらおうと、まず私がやり方の手本を示し、彼女にやってもらいました。ところが、何分待ってもハチは彼女の手に乗って来ません。お化粧をしている人には時間が掛かりますので、尋ねますと、日焼け止めを少し付けているだけだと言います。

ハチは触覚で彼女の指に触ってみるのですが、すぐ離れます。ついに私たちは諦めました。

私は以前にも同じことがあったのを思い出しました。佐世保市内に、日本女性と結婚したオランダ人がいます。2人がニホンミツバチを飼いたいからと私の家に来たことがあります。庭に置いているミツバチに馴らそうとしたのですが、彼の手には乗って来ませんでした。彼は「外国人だから言葉が通じないんだ」とがっかりしたように言いました。まさか、ミツバチが人種差別をするはずはありえませんが、彼は気分を害したような感じでした。

別の時、ハーフの小学生の男の子も巣箱の入口に手を置いて馴らそうとしたことがありますが、そのときは手に乗って来ました。どうやら、西洋人の匂いが嫌いなのではなく、東洋人の匂いがするかどうかで味方かどうかの判別をしていると思います。もう少し詳しく検証してみようと思っています。

ニホンミツバチはトウヨウミツバチの亜種ですが、中国や韓国、台湾のトウヨウミツバチ原種も人を個人識別します。身体の小さいインド亜種も同じです。仲よくするだけでなく、いじめたりしても、いつまでもその人を覚えていて、近くを通っただけで顔に体当たりをしてきます。集団登校していて一人だけ攻撃された子供もいます。

アフリカ出身のセイヨウミツバチは個人識別をせず、馴れることもありません。いじめると、近づいた人を無差別に刺します。天敵のオオスズメバチに襲われても近くの人を攻撃します。敵側と思うようです。

ニホンミツバチは逆に、飼い主のところに悲しそうな羽音で助けを求めてやってきます。

トウヨウミツバチはオオスズメバチとアジアで対立共存していますが、進化の過程で、蜜を提供すれば、人がオオスズメバチから守ってくれることを悟ったのではないでしょうか。ミツバチは匂いの世界に生きていて、人であるかどうかは体臭で判断します。太古、近くにいたのはアジア人でした。

そのように考えると、セイヨウミツバチはアフリカ系の人には馴れるのかもしれません。

昆虫の専門家に確認してもらいたいと思っています。もし私の観察が正しいのなら、人種はかなり古い時代に分岐したことになります。



ニホンミツバチはどこから来たか            

                             久志冨士男

 世界には8種類のミツバチがいるが、欧米にはセイヨウミツバチだけで他はすべてアジアにいる。欧米には野生の蜂はおらず、いるのは人に飼われているセイヨウミツバチだけである。アジアで人に飼われている蜜蜂はトウヨウミツバチだけで、他は野生である。トウヨウミツバチには亜種がいて、トウヨウミツバチ原種より身体の小さいインドミツバチと逆に身体の大きいニホンミツバチで、日本にしか生息していない。

 台湾にいるトウヨウミツバチは大陸側にいるトウヨウミツバチ原種と同じであると言われているが、昨年、台湾に行ったとき私自身で調べて、間違いないことを確認した。6角形の巣房を10個並べて、その長さを計測すると、亜種によって少しずつ違うことが判る。台湾のは大陸側と同じ45ミリであった。韓国のも中国のも45ミリである。ニホンミツバチのは青森から鹿児島、長崎県の対馬まですべて48ミリである。インドミツバチはその身体を一瞥しただけで小さいことが判る。巣房も43ミリと小さい。1つの巣房の巾はその10分の1で、ニホンミツバチだと4,8ミリである。

 これまで鹿児島から沖縄島にかけて、南西諸島ではトウヨウミツバチは生息していないと言うことになっていた。ところが昨年徳之島にいるところが新聞に載った。私は奄美大島とカケロマ島に行って、そこには居るのかどうか調べた。飼っている人もいたのである。屋久島にも飼っている人がいることが判った。

 ところが、家に帰って来てから私には、この地域のミツバチはニホンミツバチなのかそれとも台湾系なのかという疑問が出てきた。飼っている人を突き止めてしばらくすると、その人から、巣板が落下したという報が入った。私はすぐそれを確かめるために今年8月下旬に再び奄美大島に渡ったのである。

 巣房の大きさはニホンミツバチと同じであった。屋久島からは巣板を送ってもらったが,ここのも同じであった。

日本本土とは海でかなりの距離隔てられているのになぜ同じなのか。誰かが日本本土から持ち込んだのではないかと疑ってみたが、最近飼い始めた人が少数いるが、持ち込んだとは考えられなかった。持ち込むのは一定の数が揃わないと近親交配でやがて死滅することは、長崎県の宇久島で証明済みである。

 私は考えていて、これは重大なことを示していることに気付いた。蜜蜂は元々熱帯の昆虫である。地球の歴史で、北上することはあっても南下することはあり得ない。ニホンミツバチは南西諸島を通って日本本土に生息域を広げたに違いないと思い至った。

 今から1万5千年ほど前に最後の氷河期が終わったと言われている。それまでの14万年は氷河期だったのである。氷河期には日本列島の真ん中あたりまで氷河におおわれ、海水面は現在より最高120メートル低かったと言われている。

南西諸島は1つの陸地をなしていて、台湾や大陸とも地続きだった。気温も低かった。そのあと、気温が上がって氷河が融け、台湾や大陸と切り離され、そのあとトウヨウミツバチは独自の進化を遂げたに違いない。寒さに適応するために、身体を大きくしていったのではないのだろうか。そしてそのまま、対馬やその他の離島のある地域にまで生息域を広げた。さらに温暖化は進み、海水面は上昇し、陸地は分断されたのである。

 温暖化に応じて津軽海峡まで進出したが、この海峡を渡ることはできなかった。

 ニホンミツバチは世界で一番北に生息するミツバチだと言われてきたが、そうではないことが判明した。ロシアの沿海州にトウヨウミツバチが生息していることを岩手の藤原氏らが確認している。

 このことが判ったのは、沿海州の開発のためにトウヨウミツバチの蜜が日本に売り込めないかとロシア側が打診してきたことがきっかけである。

 私が不思議に思うのは、蜜蜂が生息していることは住民には判っていたことなのに、なぜ昆虫学界には知られなかったのかと言うことである。南西諸島のニホンミツバチの場合と同じである。 



トウヨウミツバチは人と取引をしたのか

そもそも、昆虫が、好きな人と嫌いな人を区別するなどと私が言うと、普通は冗談を言っていると思われます。本当のことだと言うと、「そんなことある〜? 勘違いじゃない?」と返事が返ってきます。「じゃあ、自分で試してみては?」と言いたくても、ニホンミツバチがどこにでも飼われている訳ではありません。「オオスズメバチに襲われると、飼い主のところに知らせに来ます」などと言うものなら、「妄想もいい加減にしてよ」と言われます。

  学問とはいろいろの人の発見の積み上げですから、私の発見も認めてもらい、体系の中に入れてもらわないと学問の発展に寄与しないと思います。私としても、正式の論文にして学界で認めてもらうようにした方がよいと考えるのですが、その場合、どなたに審査してもらったら良いのか分かりません。どなたか、私の発見に基づいた次の研究をしたいと望まれる人が現れるかもしれませんが、このままでは困ることが起こると思います。ニホンミツバチの世界にはまだまだ知られていないことがいっぱいありますので、それはありうることです。

 上記の、ニホンミツバチが人を覚えると言うことは、これまで誰も思い至らなかったことです。私は納得してもらうために、最近出版したDVDで詳しく映像化しました。

 昆虫が人を覚える、人と友だちになると言うことは、考えれば考えるほど、奥の深い問題であることが解ります。昆虫が人に愛情を持つことであり、愛情とは何かという人間にとっての永遠のテーマを示しています。飼い主が花にいるハチに指を差し出したり、巣箱の入口に手をやったりすると乗って来ますが、知らない人には乗って来ません。出会ったときの羽音でも愛情を表現します。単に、人の皮膚にある汗の欠片を食べてミネラルを補給しているとは言えないのです。

哺乳類ならそれは理解できます。犬や猫なら感情を持っています。しかし相手は昆虫です。

 オオスズメバチに襲われると、本当に飼い主のところにやって来て「追っ払ってください」と懇願します。それを表現する言葉も持っています。蜂語の解らないころは、そのことに気付きませんでしたが、言葉が判るようになると気持ちが判るようになり、そうすると、人間も心が縛られることになります。言葉とは不思議なものです。

 人に馴れると言う問題を突き詰めるとき、オオスズメバチの存在を抜きにはできません。ニホンミツバチはオオスズメバチと戦う術を持っていますが、総力戦になると勝てません。しかし人を援軍にすることが出来たら勝負は決まりです。「蜜を上げるから味方になってください」と本当に昆虫が言うのでしょうか? 言ってはいないのかもしれません。しかし実際はそのような取引が成り立っています。

 実はこのオオスズメバチも人を覚えます。テレビでは悪魔の使いのように扱われていますが、あれは自分たちの巣を人の攻撃から守るための正当防衛にすぎません。優しく接すると、優しく反応します。一旦敵でないと認めると、そのあと刺すことはありません。最初の出会いが大事です。こちらも人との付き合いが長いのではないでしょうか。

 進化はそれほど短い時間で完成するとは思われません。この、人に馴れるという行動がDNAに組み込まれるにはかなり長い時間が掛かったものと思われます。人とミツバチとの付き合いはそれほどの歴史を持っていることになります。何十万年なのでしょうか。ホモサピエンスが出現する前からではないのでしょうか。

 トウヨウミツバチにはいくつか亜種がありますが、すべての亜種が人に馴れます。亜種が分岐する以前にこの行動を獲得したことになります。

 人に馴れると言っても、もしそれが東洋人に対してだけだと言うことになれば、人種が分岐した後だと言うことになります。

これを探って行くと、逆に人類の歴史が見えてくるのではないのでしょうか。



2010.4.16 明石 

        奄美大島・加計呂麻島調査レポート

 ニホンミツバチはこれまで北海道と沖縄を除く地域では生息が確認されてはいるものの奄美諸島のデータは全くありませんでした。結果から言うと今回調査した奄美大島と加計呂麻島にはニホンミツバチが生息していました。
この他の島でもミツバチが生息してるという情報もありもしかすると現在生息の確認されていない沖縄にもニホンミツバチが生息している可能性があります。これは沖縄よりも南に位置する台湾や東南アジアにもトウヨウミツバチが生息している事からも十分に考えられます。

 今回奄美大島と加計呂麻島を調査してわかった事はハチはいるもののどうやって飼ったり、蜜を取ったらよいかという事を皆さん全く知らないという事です。
元々島には養蜂というものがなかったのも理由の一つですが、日本の場合、養蜂家同士の技術交流がなく養蜂技術の伝達がその地域に限定された事が大きな原因だと思います。
その為セイヨウミツバチなら巣箱の形、大きさは全て統一されていますがニホンミツバチの場合は巣箱の形、大きさ、採蜜の方法などが地域によってバラバラです。
今回の調査中に出会った人もハチは飼いたいもののハチの扱い方が全くわかっておらずせっかく見つけた巣をダメにしてしまっていました。今後はこのような事がないようにハチの扱いに関する情報を広める事が必要だと感じました。

<奄美大島>
 4/7に奄美大島、4/8に加計呂間島を調査したのですが奄美大島に到着してまず目が付いたのが黒松。この松は人が植えたという訳ではなく自生したものです。山を見たときに緑の中に見える色の濃い部分は全てこの黒松で、島の至る所で見る事が出来ました。
 奄美大島は切り立った山が多く、海のすぐ側まで山が迫ってきている状態で、島の北部には多少の平野部があり島の名産であるサトウキビの栽培が行われている他僅かに田畑が存在していました。
 島の南部には全くと言っていいほど平野部がなくほとんどが険しい雑木の山でした。

 奄美大島も長崎の島同様一度ほとんどの木が燃料などとして切られその後出来た山が多く、昔は段々畑だった所にも木が生え農作地から原生林へと登録され直したところが結構あるそうです。ただこの島の場合は全てが完全に切り倒された訳ではなく山の奥深くなどには昔からの原始の森が存在しています。

 ミツバチに関してですがこの島の場合の問題点は草の蜜が少ないという事。ミツバチが生息するには山の雑木の蜜と平野部に存在する草の蜜が必要です。この二つの蜜源が存在する事で一年中常に何かの蜜がある状態を作り出せるのです。
 つまりミツバチが生息出来るのは単に緑がある場所ではなく雑木の山と田畑や果樹などがある里山のような場所なのです。ミツバチは太古の昔から人の生活する近くで共に生活してきた仲間なのです。
 奄美大島の場合山の雑木の蜜は十二分に存在するのですが草の蜜が少なく、もし本格的に養蜂をしようとするならば畑や果樹などの蜜源を増やす必要があります。

 調査中知り合った方の情報ではマンゴー農家の方が唯一ニホンミツバチを飼っているという事でしたが元々田畑が少ない上に現在水田にタガメやドジョウを呼び戻そうという活動をしている場所だけに農薬散布の影響は少ないと考えられるので島の北部を中心に養蜂が可能だと思います。

<加計呂麻島>
 加計呂麻島も奄美大島同様雑木の切り立った山の所々に松が生えている状態ですが奄美大島と違う点は松が枯れ始めているという事です。
この島の松は全てが枯れている訳ではなく枯れている松の隣には元気な松があるというもので、もし松枯れの原因が松喰い虫であれば近くの全ての松が枯れていなければならないはずですがそうはなっておらず松枯れの原因が松喰い虫でない事が示されている例だと思います。
 では何が松枯れの原因かと言うとそれは単純に土地が肥えてきた事と雑木が大きくなった事です。そもそも松は痩せた土地にしか生えない植物で土地が肥えてきたり、雑木が大きくなり日が当たらなくなると自然に枯れるものなのです。今加計呂麻島はちょうど植生が変る時期なのです。奄美大島の松がまだ枯れ始めていないのは加計呂麻島に比べてまだ雑木が大きくないからなのです。

 加計呂麻島は現在大規模森林伐採計画で問題となっている所なのですがこの島の地形等を考えるとほんの僅かでも森林を伐採すれば島の生活は成り立たなくなってしまうでしょう。現に島の地質を考慮せずに作られたと思われる道路は至る所で土砂崩れを起こしており大雨の際には必ず大きな土砂崩れがあるようです。
さらに島の生活で重要となる水が枯渇するのは間違いなく、土砂の流出による海への影響は計り知れません。
 自然環境が全ての産業に多大な影響を及ぼしている島において森林伐採は島の崩壊へと導くでしょう。

 しかし現在の島において雑木は直接的な利益をもたらすものではなく目先の利益を求める者にとってはチップの原料以外に何の役に立たないものに見えてしまうのでしょう。
 その雑木が大規模伐採以外の方法でより大きな産業を生み出すのであればこの伐採計画も中止せざるを得なくなると思います。その一つとして養蜂は大きな可能性を秘めていると思います。

 この島には現在ニホンミツバチが生息しており、奄美大島同様草の蜜源が少ないものの各集落において養蜂が可能です。ただある程度の現金収入を得る為には蜜源植物を植える必要があります。
平地が少ないこの島ではそれほど多くの蜜源植物を植える事は難しいと思いますが温暖な気候のおかげで年中野菜の栽培が可能で奄美大島では特産となっているマンゴーやタンカンなどの果樹を植えればその収穫と共に一つの産業とする事が可能だと思います。
 またこれらの作物を無農薬野菜や果物として売り出せば、かなり商品価値が上がると思います。
実際人工的に受粉させたものとハチが受粉したものでは味や形や大きさが全然違い、ハチを導入した事で収量が2倍以上に上がったという例も少なくありません。
 これはハチが受粉のベストタイミングを知っているからです。花には受粉に適した時期があり咲いていいる間が常に受粉に適しているとは言えません。花は自らが受粉したいタイミングで蜜を多量に出しミツバチを呼び寄せ、ハチはハチですぐ近くの花の蜜を集めるのではなくランダムにある程度距離をあけて蜜を取るので近親交配とならず良い実が生るのです。

 加計呂麻島を調査して感じた事はほんの僅かでも自然に手を加えると全体に大きく影響するという事です。加計呂麻島の周囲は本当に綺麗なサンゴの海で透明度も非常に高いのですが、一部護岸工事を行った場所では海水が濁り無残な姿に変っていました。先に述べた道路の問題も同じでこの島の山の角度というのはこの角度でしか成立しないものであり、子供の頃砂場で砂山を作って遊んだ時に下の方の砂を僅かでも取ってしまうとその上の部分が全て崩れ去った様に道路で削られた斜面は必然的に崩れてきているのです。これをいくらネットやコンクリートで固めようともその力を止める事は出来ません。

 夜にはこれまで見た中でも3本の指には入るであろうと思われる大変美しい星空が浮かび、海中には海ホタルの光、辺りにはカエルの鳴き声が響きわたるという日本では数少ない自然豊かな島を森林伐採で壊す事はして欲しくないものです。
 それともう一つ、この島では松には農薬散布せずに枯れたものを焼却するという方法をとっておりほとんど無農薬に近い島ではあるのですが数年前よりヤスデ駆除に大量の薬を散布しているようでこの影響がどう現れるかが気がかりです。また島の人の話では以前に比べて海草が少なくなってきたり、根付いている魚が減ってきたり、フナムシが少なくなってきたりしているという事で自然豊かなこの島にも環境の変化が見られるようです。 


明石 

        小値賀・宇久調査レポート2

<宇久>
 宇久は宇久島、寺島の二つの有人島を有し、島の面積、人口共に小値賀とほど同じ規模で小値賀とは船で20分程度の距離に位置し環境条件的には小値賀とかなり近い島です。
ただこの二つの島の自然は全く装いを異にしていました。

 宇久も小値賀同様戦争前後に一度全ての木が切られその後再び雑木が生まれた所で、調査中唯一見つけた樹齢50年を超える大木は根元に石碑を抱えた小さな社の御神木でした。その為外見上は緑の濃い自然豊かな山に見えるのですが実際に近くで見ると一本一本はそれほど大きくはないのです。
宇久は小値賀に比べて山が険しく平地が少ない為に田畑が少なく、山際に面した段々畑もその多くは耕作放棄地となり雑木の山の一部と化したり、まだ放棄されて年数の経っていない場所は竹が生え始めているという状況でした。

 宇久が小値賀と大きく異なる点は松の数です。小値賀は島の周囲を中心にに防風林として松が植えられ保護されていますが宇久にはほとんどありません。その分宇久には雑木が多く小値賀よりも緑が濃くウグイスやメジロなどの野鳥の数が多く、調査中には野生のキジも見つけることが出来ました。
この雑木の多さが一度絶滅したミツバチが現在急激に増えている要因なのです。

 もう一つ宇久でミツバチが増えている要因は農薬散布の少なさです。元々田畑の面積が少ない上に松もそれほど多くなく、この松に散布される農薬に関しても散布エリアが縮小されています。これは島の特産である牛に影響があるからと酪農家が農薬散布を嫌うからです。ちなみに近くで農薬散布される場合は先に牧草を全て刈り取るのだそうです。

 宇久でのミツバチの復活が示すのは環境さえよければミツバチは急速に増えるが環境が悪くなれば一気に消滅してしまうという事です。

<問題点>
  • 本当に松枯れ防止に農薬散布が必要なのか?
  • 農薬散布による松枯れ防止の効果はどれぐらいあるのか?
  • そもそも防風林は必要なのか?(宇久ではそれほど目立った防風林はありませんでしたがちゃんと農業が行われていました。もちろん各場所で地形や風向きが異なるので一概にどうこう言う事はできないのですが)
  • なぜ防風林は松でなければならないのか?松以外にも防風林として利用できる木はあります。
<まとめ>
 今回の島の調査でキーポイントとなるのは松と松枯れ防止の農薬です。島の生活を守る上で必要とされる松、しかし本来松は痩せた土地に生える植物で成長し土地が肥えてくれば枯れ、他の雑木が生えてくるものです。
その松を防風林や景観という理由から守り続ける事は土壌の変化をストップさせる事にもなります。農薬散布で土壌が痩せてしまえば松しか生えない(もしかすれば松すら生えない事になるかもしれない)土壌となるばかりか地上の生物はおろか海の生物へも悪影響を及ぼしかねないと思います。

 土壌や植生の変化と共に生活をしていく方法を考える必要があると思います。

 最後に寺島の話をしたいと思います。宇久にある有人島の一つである寺島は現在13世帯17名で全ての島民が年金生活者の島です。
この島には大量の松が生えており毎年大量の農薬をヘリで散布しています。この農薬散布の理由は単に景観という理由です。しかしこの島に観光に来る人などおらず行く行くは無人島になるであろう島です。
 この島に本当に農薬散布が必要なのでしょうか?この散布は島民が希望しているわけではなく行政が勝手に行っているのです。
 まずはこの島の散布を中止し、それに伴って本当に松が枯れるのかを検証し自然の植生の変化を観察すべきだと思います。
 小値賀島や宇久島を無農薬にして実験するのは難しいと思いますがこの寺島であれば無農薬にする事は何も問題ないはずです。まずはこの島は無農薬の島とする事は非常に意義のある事だと思います。


2010.3.31  明石 

        小値賀・宇久調査レポート1

 
3/29〜3/30に長崎県の離島である小値賀・宇久の現地調査を行ってきました。29日は小値賀の役場の方にも同行して頂きミツバチの生息状況、海岸の生物、草木に集まる昆虫や野鳥を調査しました。
その結果をお話する前に、まずこれらの島の経緯を話さなくてはなりません。

 小値賀・宇久をはじめ長崎の島は戦時中、佐世保等からの疎開地となっており空襲で焼け出された人達がなだれ込むように押しかけ人口が爆発的に増え、食料不足を起こし山は開墾され田畑となり、残った木も燃料として全て切り倒されてしまいました。
住む場所を失った昆虫や鳥は消え去り、その中で蜜源を失ったミツバチも多くの島で絶滅してしまったのです。
戦後多くの人が島を離れ田畑は放置され空き家が増え山は放置されました。
その結果田畑にはまず竹が育ちその後に雑木が生え、雑木が大きくなると日が当たらなくなった竹が枯れ雑木の山へと姿を変えていきました。
これらの植物は誰かが種を撒いたのではなく鳥などの生き物が運んできた種のうちその環境に最も適した物だけが育ち自然の山を形成していったのです。

 ハゲ山と化した島に自然が戻ったのは50〜60年近く経ってからです。この事から一度破壊された自然が元に戻るのには少なくとも50〜60年はかかるという事です。
ただし一度失われた昆虫の中には戻らなかったものも沢山いたはずです。そう、その一つがミツバチだったのです。戦争の傷跡がこんな所にも影を落としていたのです。

 こういった訳で宇久は一度はミツバチが絶滅していましたが久志先生のワバチ復活プロジェクトにより現在は数を増やし島内で40群以上にも増えている状況です。
これに対し小値賀では絶滅していたと思われていました。

<小値賀>
 今回なぜ小値賀を調査したかというとこの島には防風林として松が沢山植えられておりその松に対し松枯れ防止(松喰い虫駆除)の目的で散布される農薬(今一番問題となっているネオニコチノイド系の農薬ではない)の影響を調べたかったからです。
まず海岸部の状況ですがフナムシは全く見られず(後でわかった事ですが今の時期にはフナムシは岩の隙間や裏に集まっており普通には見られないとの事です)、ニナ貝は見られるものの大きなものはなく数も少ないように感じました。役場や地元の人の話では地元の名産であるヒジキやアオサ等の海草が近年生えなくなり、最盛期は年間90トン(実際には100トン以上)の水揚げのあったアワビが現在ではなんと1トン未満という1%も満たない厳しい状況です。
この他伊勢エビ、ウニ、多くの魚の漁獲量が大幅に減少しているようです。

 内陸の様子ですがあたり一面に咲くハマダイコンの花には蝶が僅かに見られるがあとはアブが少しで昆虫が見当たらない。調査中発見したツバメはたった3匹、ウグイスやメジロなどの野鳥も見られるものの数が少ない。
絶滅していたと思われたミツバチを桜の花で1匹発見しその近くの別の花で数匹発見。この発見場所は町の中心部で農薬の散布されていない地域でその他の場所では発見出来ませんでした。

小値賀は昔はスイカ、今はメロンの栽培が有名のようですが現在はメロンにはセイヨウミツバチを買い入れて受粉しスイカは人が手で受粉しているとの事です。また小値賀には牛が沢山飼われているが現在不妊や流産等の問題はないそうです。

小値賀の松への農薬散布は20年以上前から続けられており大きなエリアはヘリで小さなエリアは手で散布しておりそれらは役場の人が行っているそうです。

 小値賀は地元の農業等を守る為に防風林が必須であり防風林となっている松への農薬散布は当然の事となっている。地元の産業はどれも厳しい状況で農業はハチを買い入れなければならない状態で漁業はすでに壊滅的な状態である。

 漁業が悪化している原因の一つは地球の温暖化が挙げられる。これは漁港でサンゴを見つけたことからも明らかで温暖化で海草が生えなくなり、それに伴い魚介類の餌やすみかが奪われた事による。
さらには乱獲も問題の一つと考えられる。漁業技術の進歩もこれを後押ししたと考えられる。
最後に農薬による影響。これは松枯れ防止で散布された農薬が海に流れ込み海辺の生物が殺されそれに伴う食物連鎖の影響が一つ、農薬散布による土壌細菌や微生物の死滅により土地が痩せ海への栄養分が十分に行き渡らなくなった為。
これらが複雑に絡み合っている為農薬がどれほど漁業に影響しているかが見えにくくなっている。
地上部の状況からも完全に昆虫や鳥類がいなくなっている訳ではなくどこまで農薬の影響があるのかがわかりにくい。

 ただし自然環境が悪化しているのは明らかでありこの島では全ての産業が危機的状況である。第一次産業が主となっているこの島において自然環境の悪化は切実な問題であり、現在自然をうりに行われている島の観光業も厳しい状況と言わざるを得ない。

 最後に余談ですが小値賀には野崎島という無人島の教会で有名な島があります。ここには天然記念物に指定されている鹿がおり、天敵のいないこの島で増え続けているそうで鹿より背の低い草は全て食べられてしまうそうです。現在は飽和状態になったようでこれ以上増える気配はないようです。
ここの鹿は時々小値賀島の方へと海を泳いで渡ってくる事があるそうですが捕まり元に戻されるそうです。
鹿が海を泳ぐ事も凄いですがイノシシには叶いません。
数年前にはいなかったイノシシが現在小値賀島に2頭確認されているようです。どうもこのイノシシは上五島の方から泳いできたと見られるのですが鹿と違い一度島に入り込んだイノシシは様々な罠を仕掛けても全く捕まらないという事です。
潮流の速いこの辺りをイノシシや鹿が泳ぐというのは驚きです。動物の能力の高さには関心させられます。


久志

        私は元ハンター
                            
 私は若いころ25年間、狩猟免許を取り、散弾銃と空気銃を持って狩猟をしていました。しかしその25年の間に、環境が少しずつ変化し、獲物が減って来ました。カモやキジバト、野うさぎは獲るのではなく増やさなければならないと思うようになったのです。
今でも山道では、わずかの羽音や足音にも敏感です。小鳥たちのさえずりを聞いて、何を言っているのか解ります。ニホンミツバチの言葉が判るようになったのは、小鳥たちに耳を鍛えられたためだと思っています。
ところで昨年12月20を境に、我が家の周りからキジバトが姿を消しましたが、それまで毎朝、庭の木や電柱の上で鳴いていたキジバトの鳴き声を鑑賞していたので、いなくなったことにすぐ気付いたのでした。
私の家から200メートルばかり行くと稲田が広がっています。昨年の9月に、毎年鳴っていた、スズメ脅しのガスデッポウが鳴らないことに気付き、行ってみたら、ちょうど稲田の持ち主がいて、なぜ今年はガスデッポウを鳴らさないのか尋ねると、スズメがいないからだと言います。農薬を撒くころはいたのに、という返事。7月にはツバメも姿を消したことに気付いていたので、スズメも農薬にやられたと直感しました。そのとき、キジバトも籾を食べているので、同じようにやられるのではないかと心配になっていたのです。
その心配が的中してしまいました。ネオニコチノイド系の農薬は紫外線に当たると分解すると書いてあります。ということは、田んぼに落ちている落ち穂の地面に接している側は毒が消えないということになります。スズメは2カ月、キジバトは4カ月籾を食べ続けて食中毒を起こして死亡したと考えられないでしょうか。

次にキジバトの言葉について話してみたいと思います。
小鳥の声で一番理解が難しいのはキジバトの声です。カラスやトビが視界に入ると、巣にいる雌や雛に「動くな」と警告して鳴きます。あの「ポッポー、ポッポー」と鳴くのがそれです。雌と雛は一瞬動きを止め、固まります。私と視線が合って頭を傾けたちょうどその時、雄の声がすると、頭をかしげたまま動きません。カラスが去ると雄は飛んで危険が去ったことを知らせます。
餌は雄と雌が交代で運んできて雛に食べさせます。巣に来る前に「ご飯ですよ」と雛に呼びかけます。雌も同じように鳴きます。すると雛たちは羽を羽ばたいて喜びます。この「ごはんですよ」という声と「カラスがいるよ」という声の違いが、どうしても私は聞きわけることができません。また、雄が新しい伴侶を募集する時も鳴きますが、この時の声も聞き分けられません。どれも同じに聞こえるのです。
キジバトがいなくなって、こんな声を聞くこともなくなり、とても寂しくなりました。


 久志

     ニホンミツバチの言葉

 昆虫であっても、みんな自分たちの言葉を持っているのですが、ニホンミツバチは昆虫の中でも一番多くの言葉を持っているのではないでしょうか。私が理解できるのは20くらいあります。セイヨウミツバチは10くらいで、オオスズメバチはその中間で15くらいではないでしょうか。ニホンミツバチとオオスズメバチはこちらの言うことをいくらか理解させることができます。
 この2種のハチは特別賢く、人間の知恵を凌ぐことがあります。例えば、私は感電式のオオスズメバチ撃退器を考案したのですが、4.5日でオオスズメバチはその原理を理解し、同時に2本の線に触れなければよいことに気付き、1本の線をターミナルの所で噛み切ります。
 ニホンミツバチはオオスズメバチに襲われると、悲しそうな羽音を立てながら、飼い主の所に知らせに来ます。
 これから、蜂語のいくらかについて述べてみます。
 まず、シヴァリングについて。危険が迫ると蜂群は一斉に「シャーッ」と羽音を立てます。猫が怒った時に背中を持ちあげて出す声に似ています。音の高さが危険度の高さに比例します。巣箱の外に群がっているとき観察しますと、水面に石を投げると、そこから波紋が広がるように、一か所から翅の動きが広がるのが判ります。最初に危険を感じた者が羽を震わせ、その信号が全体に広がるわけです。
 私が蜂の群れに指を近づけると、1匹が触覚で触りましたが、そこから波紋が広がりました。羽音はしませんでした。かすかな翅の動きは、最小の危険度、すなわち安全を意味するようです。危険と安全という人間にとっては反対の意味が、ニホンミツバチでは同じ動きの強弱で示されます。これが蜂語の文法です。
 お尻から空中に匂いを出して、空中にいる仲間に「こちらに来なさい」という意味を伝えますが、同時に、この信号は、自分たちの中間以外の者に対しては「あっちいけ」の全く反対の意味になります。この匂いは強くて、人にも感じ取れます。
 花に来てミツを集めるときは嬉しそうな羽音です。他の巣を襲ってミツを奪おうとする時は雄たけびのような甲高い声、守る側はもう少し太い声で応戦します。人が巣の前に立つと「邪魔だ」と言うし、暗闇の中を仕事から帰ってくるときは、「どこ、どこ」と聞こえる羽音で巣門を探します。押さえつけると「痛い」と叫び、それを聞きつけた番兵が人の額に体当たりをします。笑い声と鳴き声は人種に関わらず同じですが、ハチも人間の声とあまり変わらない羽音を出します。人間も昆虫も同じ心を持っているようで不思議です。


20101.15   久志

ニホンミツバチに近づいて見よう

 隊員の方から、「はじめてニホンミツバチの巣箱に近づくときはどんな注意が要りますか?」と問われ、一瞬考えました。私はもう20年以上もこのハチと付き合ってきていますので、そんな初歩的なことは意識しなくなっているようです。

 
そこで、壱岐島の人たちが私のハチを受け取りに来られた時、どのように指図したか思い出しながら、述べてみます。

人の傍で飼われている群れは一般におとなしいです。中には攻撃的な群れもいますが、それは飼い主が邪険に扱っているからそうなっているのです。元々野生のハチで、人を恐れています。優しく扱うと安心して人に馴れます。

はじめて巣箱に近づくときは、馴れているかどうか分かりませんので、いきなり近づかないことです。知らない人が10メートルも近付くとハチは匂いでそれを知り、巣の中ではざわめきが起こります。それで、巣箱から5,6メートル離れたところで立ち止まり、30秒待ちます。それでハチは、近づいているのは敵でないと思い、一応安心します。それからゆっくり近づきます。巣箱の横に行って、10秒ほど待って、出入り口(巣門と呼びます)を見て、ハチが落ち着いているのを確認します。それで大丈夫です。あとは巣門にいる番兵の脇腹をくすぐっても大丈夫です。私はミツを採る時も面布(顔を守るための網付きの帽子)を必要としません。

時には人に不信感を持っている群れもいます。過去に人に痛めつけられた経験があるのです。30秒待っても巣門のざわめきが収まりません。中には人の顔の前に飛んできて、左右に往復運動をしたり、顔に体当たりをしたりするのがいます。こんな群れには20分以上近づいたり離れたりを繰り返します。時間をかけるとおとなしくなります。

落ち着きのない群れの場合、ハチたちのお尻の先端が白くなっています。「変なのがいるよ、みんな用心して早く巣箱に入りなさい」という信号のフェロモンを空中に放出しているのです。こんなハチがいなくなるまで待つことになります。

ニホンミツバチと付き合うときは最初の出会いが大事です。いったん友だちになると、刺すことはありません。巣箱に出入りするハチの羽音も聞こえなくなります。羽音が聞こえるのは何かを言っている証拠です。「この人信用していいのかな」とか「今日はこの人汗臭いじゃない」などと言っているのです。

セイヨウミツバチはどんなに付きあっても人に馴れません。それで巣箱を扱うときは、面布と薫煙器は必須です。ニホンミツバチは煙を吹きかけると、人を信用しなくなり、友だち関係が崩れます。



2010.1.16   久志

  オオスズメバチも友だちになれる            

 私はこの5,6年、オオスズメバチを庭で餌付けしてきた。このハチはとても利口である。ただ、セイヨウミツバチの巣箱に取り付ける捕獲器の構造だけは中々学習できず、よく捕まる。それ以外では驚異の頭脳を持っている。ニホンミツバチが昆虫の中ではIQはトップで、2番目がオオスズメバチであろう。どちらも言葉を持っていて、ニホンミツバチは20以上、オオスズメバチは15以上、セイヨウミツバチは10位の言葉を持っているようである。いや、私が理解できるのがそれ位なので、それ以上持っていると思われる。彼女らの言葉については次の機会に話すことにしよう。

 頭がよいだけに、人によく馴れる。とても臆病で、元々人を恐れている。怖がらせたら自衛のために攻撃するので危険である。ハチ類は先制攻撃をすることはない。馴らすということは、人は危害を加えないと信じさせることである。頭がいいので、教えたら直ぐ理解する。

このハチも最初の出会いが大事である。優しい出会いがあればいつまでも温和である。

ハチ仲間の友人が来訪したとき、2キロばかり離れた棚田の石垣に営巣しているオオスズメバチの巣を見せるために連れて行ったことがある。

私は3回目で、すでに馴らしていたので刺される心配はなかったが、彼は初めてで、心配していた。彼には面布を被っていただいたが、半袖シャツである。私には彼が刺されない確信はあった。

巣に10メートルばかり近づくと3匹がやってきた。私は「動かない」と言った。ハチたちは私の頭の周りを1巡したが、そのあと彼を取り囲んだ。1メートル位の距離でホバリングをしている。すーっと10センチ位まで近づいたりする。私は「動かない」と言い続けた。30秒ほどすると3匹は巣のほうに戻った。検査にパスしたのである。私たちは巣の傍に行き、3メートルばかりの所に立って観察した。巣の出入り口には番兵がいるのであるが、こちらを睨まなかった。私たちの耳元をかすめるように飛ぶハチもいた。

刈り入れが終わって、再びその場所に行ってみた。稲田の持ち主に駆除されてはいないか気になったからである。偶然にも、その稲田の持ち主が来てトラックタ―で仕事をしていた。

ハチはまだいて巣に出這入りをしていた。「危ないな」と思い、仕事をしている人に、「オオスズメバチがいますね」と言ってみた。彼は「どこにですか? いませんよ」と答えた。私はとっさにこれ以上言わないほうがよいと思い、言葉を濁した。オオスズメバチは自分たちに気付かない人は攻撃しないのである。



久志

  オオスズメバチは人に馴れる(その2)

 30キロばかり離れた私の郷里の山際に置いているニホンミツバチの1つの巣箱に、オオスズメバチが20匹ばかり取りつき、中に入ろうと巣門をかじっていた。以前は、柴を束ねて、それでいきなり、まとめて叩き殺していたのであるが、中には反撃するのもいるので危険である。100回成功しても1回失敗して1匹に刺されたら命を危険に曝すことになる。

 馴らしてから1匹ずつ殺すことに決めた。馴らしたら刺さないのである。私はゆっくり少しずつ、時々立ち止まりながら近づいた。10分ほどで巣箱の横にたどり着いた。オオスズメバチとは50センチほどの距離である。

虫取り網で1匹ずつゆっくり、すくい取り、踏みつぶしていった。このハチには、ニホンミツバチとは違って、「タスケテ」という言葉はないので、仲間が殺されても他のハチが攻撃することはないので安心である。

何匹か殺したあと、スーッと逃げるのがいたので、網を大きく振った。しかし網の縁に当たって、そいつは逃げた。ところが反転してきて、帽子にとまった。「ブーン」と羽音だけが聞こえる。どこにとまっているか分からない。

以前同じことがあったが、その時は私の腰にとまった。馴らしていなかったら刺されるのである。友だちになったので刺せず困惑しているのである。羽音は「あなたは友だちでしょう?」と言っているのである。人間同士であれば、信用させて殺すのは裏切り行為であり、人格崩壊した人間のすることである。しかしこの際は、相手は昆虫である。人間が命の取り合いをする訳にはいかない。私は持ってきていたバーナーに火を付け、手を伸ばして帽子の上に吹き付けた。羽を焼かれてハチは落ちた。



久志

  オオスズメバチは人に馴れる(その3)

 私は4,5年間、私の庭でオオスズメバチを餌付けしたことがある。セイヨウミツバチ用のオオスズメバチ撃退器を開発していたので、助手が必要だったのである。

砂糖水を皿に入れておくとやってきて飲む。私が家の陰から現れると、匂いですぐ勘づくらしく、こちらを見て、腹をよじり、剣をこちらに向ける。私は知らぬ顔をして通り過ぎる。その間、こちらに剣は向け続けたままである。私が反対側の家の角から現れると、また同じことをする。そんなことを4、5回繰り返すと目を向けるだけで剣は向けなくなる。やがて眼も向けなくなる。そうなると、そばに行っても動じなくなり、カメラで接写もできる。砂糖水を補給してやる時は、割りばしで摘んで持ち上げ、そこに砂糖水を注ぐ。彼女らの体重はちょうど1グラムで、1回に飲む砂糖水も1グラムである。30匹位集まるので、1日に何キロも砂糖を消費する。

日にちが経つと本当に馴れてきて、私が割りばしで頭を叩くと、片方の脚と羽を上げ、顎を開いて怒った真似をする。さらに叩き続けると、飛び上がって木の上に避難し、私が去るのを待つ。

ある日、私の取材にテレビ局がやってきた。私は庭で巣箱を作っていた。彼女らは光る大きなレンズのテレビカメラが珍しかったのか、怖かったのか、カメラマンの周りを飛び回った。私は、黒い服のカメラマンが刺されはしないかと気が気でなかった。しかしスタッフたちは誰も彼女らの存在に気づかなかった。2,30匹が、見慣れない人たちが来たので驚いて飛び回っているのにである。

私は黙っていた。言ったらスタッフたちが驚いて急な動きをし、かえって危険になると思ったからである。5分くらいで、彼女らは安心したように静かになった。


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