世界が認めたニホンミツバチ生業養蜂

世界的な権威があるミツバチの専門誌
「Bee for Development Journal Issue No 94, March 2010」

今回第一論文として英文で掲載されました。
その全文を日本語訳したものを掲載いたします。

表紙(裏)
 表紙は冨山一子さんです。横にあるのは重箱式巣箱で、採蜜に効率が良く、製作費は低い。日本の五島列島に久志冨士男氏によってニホンミツバチ復活のときに採用されたものである。この成功をおさめたプロジェクトについては8ページに詳しく記事にしている。

収益の多いトウヨウミツバチ養蜂
 長崎県佐世保市 久志冨士男

キーワード:トウヨウミツバチ、ニホンミツバチ、ハチの生態、重箱式巣箱、五島列島、蜜生産、日本、オオスズメバチ。

私は、この機関誌85号、2007年2月版で、「五島列島での日本ミツバチ復活」と題して掲載していただいたが、その後の経過について、ここで報告させていただくことになった。
 前回記事の中で、戦後長崎県の4つの離島で絶滅していたニホンミツバチをどのようにして復活させたかについて述べた。これらの島で以前このハチを飼っていた家をすべて突き止め、このハチの消滅の原因についても述べた。

結果は直ぐ出た
 島に移すためのハチを増やさなければならなかった。私はミツバチを守るためのオオスズメバチ防止器を開発し、それを私の巣箱のすべてに取り付けた。その結果、私のミツバチたちは毎年倍加して行った。私は2008年、十分な数のミツバチを入手し、50群を島に移すことができた。
 すべての島で、ハチたちはすごい勢いで増殖し、このハチによる生業を目指す人たちも現れた。セイヨウミツバチを飼うよりもこのハチを飼ったほうが利益が大きいことが分かって来たのである。このハチのミツはセイヨウミツバチのミツの4倍の値段がするのである。

ニホンミツバチの長所と短所
 ニホンミツバチはどんな病気にも滅多に掛からない。薬を使う必要がないので、蜜に残留する薬品もない。スズメバチの攻撃に対しても反撃力があり、人に馴れるし、花粉媒介力も優れているし、なによりミツの味がよい。高価な養蜂用の道具も少なくて済む。
 1つだけ短所と言われるものがある。このハチの採餌行動半径が2キロで、セイヨウミツバチの4キロに比べて半分であり、面積にして4分の1である。そのため集めるミツの量も、1群あたり4分の1になる。でも、私はこれがこのハチの短所とは思わない。もしこのハチを4倍の密度で飼うなら、そのミツの生産量は同じになる。たとえば、1つの島での植物の生み出す花蜜は、どちらのハチが集めても同じである。このハチに集めさせた方が、ミツの値段が4倍なので、収益も4倍になる計算である!
 ニホンミツバチは逃去し易いと言う人もいる。このハチは訳もなく逃去することはない。飼う人の無頓着が逃去をさせるのである。私はこれまでほとんど逃去を経験したことはない。
 このハチがどんなに人に馴れるか説明したい。このハチは人を覚え、友だちに成れる。一旦友だちになると、決して刺さないものである。私は最近、採蜜のときでさえ面布を被ったことはない。薫煙器は? とんでもない。使いません。
 このハチは言葉を持っている。一定期間このハチと生活を共にすれば、言葉が分かるようになるはずである。私は20表現位は解る。セイヨウミツバチも言葉を持っているが、私に理解できるのは10表現位である。
 このハチは羽音を立てないで飛ぶ。羽音が聞こえるときは、人に、あるいは仲間に何かを言っているのである。友だちになってしまうと、巣箱に出入りして人の傍を飛ぶ時、全く無音である。
このハチはオオスズメバチに攻撃を受けると、人のところにやって来て助けを求める。悲しそうな羽音で人の前を飛び、肩にとまる。昆虫がそんなことするはずがないと思われるなら、自分でこのハチを飼って見られたらよい。

生態の違い
 トウヨウミツバチは蜂球の中にいるとき上を向いている。巣箱の中の巣の上で仕事をしている時も同じである。セイヨウミツバチは下を向いてとまる。このハチの前脚はセイヨウミツバチのより強力だと思われる。蜂球の中では、自分の下に下がっている他のハチたちの体重を支えなければならない。このハチは強い前脚の力でスズメバチを捕え、蜂球の中に閉じ込め、熱殺することができる。
 このハチの女王は新しく作られた巣房(6角形の穴)にしか卵を産まない。これも違いの1つである。同じ巣房は産卵には2回は使わないと言うことである。それで働き蜂は下に向かって常に新しい巣板を作り続けねばならない。可動式巣枠の反復使用はニホンミツバチにとってそれほどありがたいことではない。使い古しの空の巣房は、貯蜜用としてならありがたいが、産卵場所として新しい巣房を作らなければならない働き蜂にとっては邪魔になる。流蜜期だけは巣枠式の空巣房があれば、速く貯蜜できるので、新しく巣房を作る時間を節約できる分助かりはする。
 そんなわけで、重箱式がトウヨウミツバチにとって最良の巣箱だと思う。産卵用の新しい巣房を下方向かって作らせるために、最下段に巣箱の継ぎ足しができるからである。
 トウヨウミツバチは住処として木の洞、垂直の空洞、を使いながらモンスーン地帯で進化したのであるが、このことが、このハチにとって縦に長い空洞が最高の住処であることの理由ではないだろうか。

生業養蜂をめざしての島の人たちの意気込み
 壱岐の島が4つの島の中では、生業養蜂の可能性の観点から見て、最も成功しているであろう。11人の人たちがそれぞれ2007年に2群から飼い始めた。2009年までに何人かは30群を持つに至り、500キロのミツを収穫し、500万円ほどの収入を得るに至った。2010には100群、1トンのミツの収穫が予想される。
 養蜂家たちは耕作放棄された土地を耕し、蜜源植物を植え、新しい蜂場を増やしている。年間を通じて蜜源が途絶えることのないよう、ソバと菜の花を連続的に育てる計画である。さらに養蜂に加わる人も増えてきているので、産業組合を結成する計画である。

生業養蜂の成功のカギ
 蜜源確保が最重要課題である。壱岐島には雑木が繁茂しており、分蜂期にはその花の香りが島じゅうに満ち溢れる。しかし養蜂家はそれだけに蜜源を頼るわけにはいかない。他の蜜源、ソバ、菜の花、野菜類を計画的に植える必要がある。壱岐島も他の島同様、過疎化しつつあり、耕作放棄された土地も多い。さいわい、養蜂家の多くが農業従事者であり、放棄された土地をほとんど無料で借り受けて耕作することができる。

ミツ濃縮装置
 日本の1年は大きく2つの季節に分けることもできる。乾期と湿潤期である。乾期には湿度が45%と低く、湿潤期には75%と高い。湿潤期にはハチたちはミツを十分に濃縮することができない。もしそんなミツを採ったら、発酵させ、食品として使えないので、冷蔵庫で保存しなければならない。セイヨウミツバチ養蜂家は50℃の熱を3時間かけることで酵母菌を殺し、発酵を防いでいる。
 壱岐の養蜂家は、熱をかけないで水含有量を20%以下にする方法を模索してきた。そして乾燥剤で水を抜く方法を確立した。この方法の確立により、ミツは貯まりさえすればいつでも採蜜できるようになった。砂糖水で給餌する必要もなく、45日毎に採蜜できる。

欄内
 20年間、私はニホンミツバチにとっての最良の巣箱を追求してきた。私はできる限り、巣箱の実物、写真を全国と東南アジアから集め、試作し、それを私のハチたちに使ってみた。そしてその最高のものは重箱式であると確信するに至った。これは日本伝統のもので、長崎県でも昔から使われてきたものである。さらに私はその最適なサイズを求めて実験を繰り返した。その結果たどりついたのが、重箱1つの内寸が25×25×15cmである。これを3段ないし4段を1組として使う。蓋とその下に薄い中蓋が付く。中蓋には内部が覗けるようにスリットが2本付いている。最下部には観音開きの扉と床の付いた基台がある。
 セイヨウミツバチと違ってトウヨウミツバチは新しく作られた巣房にしか産卵しないので、常に下方に向かって巣房を作り足せるように、新しい余地を与え続けなければならない。重箱式がその解決法である。最下部に新しい重箱を加え、巣箱をかさ上げしていけばよい。
 可動式巣枠を内蔵した重箱式も試みているが、それは1つの発展形態である。継続的に蜜源植物を植えることで蜜源の途絶えない壱岐島で現在使用している。ハチたちは巣房作りの時間が不要になる分、ミツを早く貯めることができる。

 この重箱式はアベ・ウォレ巣箱と同じ原理である。セイヨウミツバチ用であるが、巣箱の天井に置かれた中蓋にハチは巣板を固着させるシンプルな巣箱である。巣枠も巣楚も不要である。隙間を通ってハチたちは隣の箱に移動する。

写真説明
分蜂して下がる場所を見つけた。
クサイチゴは優れた蜜源である。
久志氏の発明、オオスズメバチ撃退器は彼のすべての巣箱に取り付けられる。
トウヨウミツバチの自然巣。
セイヨウミツバチは下を向く。
トウヨウミツバチは上を向く。
重箱式巣箱
トウヨウミツバチを馴らす。このハチは一旦友だちになると刺さない。
久志氏が巣箱の最下段に重箱を1段入れようとしている。
群れが夕涼みをしている。
濃縮装置外観。
ミツ絞り。
普通は扉は閉じられていて、ハチは6mmの出入り口を使う。
中蓋を示す。この下面からハチは巣を作り始める。
斉藤正博さんと彼の巣箱、壱岐。
重箱式の内部。
採蜜開始。
トウヨウミツバチはスズメバチを強い前脚の力で抑え込み、熱殺する。
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